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「電動デュラエース、”世界最速”入荷!」

作成2009/03/26

先進の電動式変速メカ「デュラエースDi2」が本日店頭に入ってきました!シマノ側によると「世界に先駆けての出荷」とのことです。

ただいまハイロード店頭にてデモ展示中です。先進メカの作動感覚をぜひご自身でお確かめにおいでください!


(動画1。リヤの動作に伴ってフロントも自動で微調整する)



(動画2。リヤの変速動作には、変速に最適の「オーバーシフト」作動がプログラムされている。芸術的。)




(動画3。フロントの変速にも最適な微調整動作がプログラムされている。驚異的。)

1)「完全」といってよい完成度の「デュラエースDi2」

 型番7970番台を与えられた通称「電動デュラエース」は、金属ワイヤで作動する機械式デュラエースの発展版オプションという位置づけがされています。電動に固有のパーツは変速レバー・電動の前後変速機・バッテリー・マイコンの入ったワイヤ類だけです。クランク・BB・チェーン・後ギヤ歯・前後ブレーキの各部分は機械式のものとおなじものを使います。

気になる価格は、電動部分(レバー・バッテリー・前後変速機)だけで¥226,645−(税込)、これにクランク・BB・チェーン・ブレーキ・カセットスプロケットといった機械式7900系のパーツを加えて1台分まとめると、¥340,780−(税込。仕様により若干変更あり)という価格になります。これは機械式(一式で¥199,463−税込)の1.7倍の価格ということになります。

モデル名 商品名称 サイズ 価格 備考
ST−7900 デュアルコントロールレバー - \65,318- 必須
RD−7900 リヤディレイラー - \64,227- 必須
FD−7900 フロントディレイラー - \47,626- 必須
SM−AD79 フロントディレイラー取付けバンドユニット \5,099- フレーム形状により
不要または
1サイズを選択
\4,863-
\4,863-
SM−EW79A−E エレクトリック・ケーブル(ジャンクションA) \10,862- 必須
EW−7970 エレクトリック・ケーブル(ジャンクションB) 3サイズあり \17,979- 1サイズを選択(必須)
SM−BTR1 バッテリー \7,826- 必須
SM−BCR1 バッテリーチャージャー本体 \7,352- 必須
SM−BCC1−3 バッテリーチャージャー用ケーブル \592- 必須
SM−BA01 ボトルケージマウントアダプター フレーム形状により追加
合計(例) 合計(例) \226,645- SM-AD79(M)仕様

 なぜ敢えて電動化したのか?シマノは3つの理由を挙げています。まず「入力と出力が等しい」こと、これは機械部分の伸びや摩擦などのトラブルが起きないため性能が安定していることをさします。ついで「マルチポジションシステム」、これは、変速レバーが単なる電気式スイッチになるため、いくつでもどこにでも増設ができ、とくにタイムトライアルなどのハンドルのいろいろな場所を持つバイクで優位性があることです。最後が「さらなるストレスフリー」、これは機械式の時代からシマノが一貫して追及してきた「乗り手にメカの操作の面でストレスをかけず、走りにより集中させる」ということです。

 そのためシマノは今回の製品の開発期間として3年以上、プロ選手によるテスト期間として2年を費やしました。さらに十数年前から社内では電動メカの試験的プロジェクトが続けられていたのだそうです。この結果できあがった今回の「デュラエースDi2」はきわめて完成度の高い機器に仕上がっていると感じました。


 心配された防水については、各ワイヤの結合部分は1気圧防水を保証し、実地テストでは水没状態での数時間の走行にも耐えたということでした。また、バッテリーについては一回の充電時間が1時間、満充電状態で1000〜2000kmの走行が可能、電池寿命は約2年という十分に安全マージンのある設定になっています。また、走行中も確認できるインジケーターでバッテリー残量が確認でき、残り25%の警告状態になってもさらに220km(ステージレースのまる1日分)は走破できるそうです(なお、さらにバッテリーが無くなると、前変速がまず作動しなくなるそうです)。

 また機械式の7900系と異なりリヤ歯数27Tが最大であることに注意が必要です。これはタイムトライアルなどの条件でのプロユースを考え、限界までの軽量化と変速性能を与えるためにこのような仕様になっています。


 作動させてまず気づいた点は、前変速機の非常に大きなパワーです。シマノによると競輪選手が全力を出しているのと同程度の負担(約2000ワット!)がチェーンにかかっていても前変速をすることができるそうですが、これは従来の機械式ではまず考えられなかった性能で、これは将来の走り方自体を変えてくれる可能性があると思います。また組み付け中に不用意に指を挟むとまず血マメぐらいはできる危険がある、そのくらいのパワーでした。とくに今回のデュラエースDi2では後変速の状況に応じて前変速機も自動で微調整作動を行うので、予期せぬタイミングで前側が動く可能性が常にあり、組みつけには注意が必要です。

 このハイパワーはまた、組みつけにも様々な制約を与えます。フレームを支点として変速機の正確且つ強力な位置決めをするための新機構「チェンジサポートボルト」が設けられ、組みつけの際にはこれをきちんと設定しないと前変速が安定しません。また、前変速機の取り付け台座がフレーム側に直付けされている自転車の場合、台座の強度が今まで以上に重要になってくるはずで、組みつけフレームの選定にも注意が必要だと思います。

 次に実感して驚いたのは、前後の変速機が非常にきめ細かいプログラムで連携して制御されていて、熟練した乗り手が(時に半ば無意識に)行っている「チェン脱落の少ない変速動作」を自動で実現していることでした。後変速機を操作してゆくと一定のタイミングで前側でも微調整作動が自動で起きる様子はまさに産業用ロボットそのものです。

また、バッテリー残量はじめ若干の表示と操作を担当するマイコン(ジャンクションA)がハンドル下のブレーキワイヤに沿う位置に設置されます。

後変速機は転倒の衝撃で破損しないよう、打撃を受けると「脱臼」するような形で内部が保護される「セーバー機構」が搭載されており、この復帰動作もジャンクションAで操作します。なお、この復帰動作をすると後ギヤは一番大きなところに自動で移動するので、この復帰動作の際にはリヤメカハンガーの変形がないことをあらかじめ確認する必要があるでしょう。


2)「電動」ならではの設定自由度にびっくり!

今回の「デュラエースDi2」では、変速レバーがその構造としては単なるスイッチであるところから、興味深い組立バリエーションがいろいろと可能です。

左右のレバーの役割をふつうと逆にする。これは単に変速レバーへの左右のケーブルのつなぎ替えだけでいとも簡単に実現します。ワイヤとブラケットの赤白のマークをあわせると通常の接続、赤白を交差させると逆パターンの接続となります。


左はワイヤに白印、ブラケットにも白印

右はワイヤに赤印、ブラケットにも赤印

各レバーの大スイッチ・小スイッチの役割を逆にする。これには専用工具である「チェッカー」で電気的に設定を書き換えます。たとえば右レバーだと大スイッチでギヤが軽くなり、小スイッチで重くなるのが通常ですがこれを逆にもできるという意味です。カンパニョーロ社コンポからの乗り換えライダーにとってこれは自然な操作感となるかもしれません。


単にスイッチが2個内蔵されているだけ

青丸が大スイッチ、赤丸が小スイッチ

○さらにオプションの「サテライトスイッチ」を組み合わせることで、たとえば片方の手だけで前後とも変速ができるような配置も可能です。これにはパラリンピック関係などからの興味もきっとあると思います。


(129g。シフトワイヤ巻き取り機構がないので、驚くほど軽量!)


3)「電動」でシマノが目指す、「スポーツバイクの近未来」

先日シマノセールスの方に伺ったところによると、2009年のスポーツバイク国内販売台数は48万台、うち50%がクロスバイクで残りはロードとMTBが半々、というのがシマノセールスの予想でした。これに対し、2012年までにこれを100万台に拡大する、というのがシマノの目標だそうです。そして電動メカによって変速のテクニックが不要になることで、より初心者に優しいスポーツバイクを開発したい、というのがシマノの目指す方向であるということでした。ですから近い将来もっとお手頃な価格でも電動変速を手にすることができるはずです。

今回あらためて感じたのは、「電動シフトメカは、自動車でいうならオートマチックミッションだ」ということです。技術を問わず誰にでも扱いやすく、渋滞などでの変速のストレスもないオートマチック車は、もはや生活の中で当然の道具になっています。これとおなじことがスポーツバイクの世界でも起きるかもしれません。そういう革命の端緒を感じる「デュラエースDi2」でした。

 また製品としての完成度でいうと、このデュラエースDi2は最初からほとんど完成といってよいレベルにあると思います。もちろん(今のところは)これだけの金額を支払える人に限られますが、単なる珍品・贅沢品ではなく、きちんと実用に耐え、かつ実際に走る楽しみを変えてくれるすぐれた製品だと思います。


〜補足〜

○シマノは確か80年代はじめに変速レバーの1段ごとにカチッカチッと手応えを与える機構を搭載しました。その名称はSISといい、「シマノ・インデックス・システム」の略称でした。
80年代末期にシマノが世界ではじめて手元変速レバーを実用化したとき、それは「STIレバー」と命名されました。「シマノ・トータル・インテグレーション」の略称です。今回のデュラエースDi2にはサブネームとしてSEISという略号がついています。これは「シマノ・エレクトロニック・インテリジェント・システム」の略称だそうです。いずれも最初のSはシマノを意味しますが、含まれているIはその都度異なる意味なのですね。
 今回の7970系は作動ケーブル系にサイクルコンピューター「フライトデッキ」を組み込んで情報管理をすることもできますから、インテリジェント、というのはなかなか適切な表現です。

○「電動変速」はかねて各メーカーが目指してきた変速の未来形です。すでに航空機の操縦が電気式の「フライ・バイ・ワイヤ」になっているように、これが操縦系統の「正統進化」なのかもしれません。歴史をひもとけば、サンツアー「ビースト・システム」(MTB用のシステムで、なんとチェーンを脱線させない!という革新的なフロント変速システムでした)あり、マビック「メカトロニック」あり、最近はカンパニョーロ社もレース現場で「電動システム」をテストし続けていました。今回のシマノの動きが変速機市場、ひいてはスポーツバイクシーン全体にいったいどのような影響を与えてゆくことになるのか、興味は尽きません。

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