スポーツバイク・ハイロード
テクニカルサービスシリーズ
「クリートセッティング」

作成2007年11月16日(小訂正12月6日)
写真追加11月25日

<はじめに〜クリートとは?>
スポーツバイクは多くの場合靴がペダルに固定される機構を持っています。この機構ではペダルの付属品が靴の裏に取り付けられていて、この付属品がペダル本体と噛み合い固定されることで靴をペダルに固定します。この付属品部分をクリートといいます。

スポーツバイクのクリートセッティングは、ポジションセッティングの中でももっとも作業がデリケート且つ考慮すべき要素が多岐にわたる、奥の深いもののひとつです。

当店ハイロードでは以下のような手順と考え方でクリートの取り付けを行います。遠方にお住まいなどで当店にお越しになれない方は下記を参考に作業をしてみてください。

●所要時間 約30分
●費用 3,000円(税込)
※作業の質を高めるため原則として予約をおすすめしています。
※個別の事情で著しく作業時間が延長した場合、30分あたり3,000円 の延長料金が生じることがあります。あしからずご了承ください。


1)乗り手の足の拇指球の位置を確認する。
触診して、球状の関節である拇指球の中心を見つけます。


2)「リベット」を粘着。
上記1)の作業のために用意した円錐状の金属小物「リベット」を、先に発見した拇指球の内側、足の側面に両面テープで固定します。


3)ソックスをはき、靴に足を入れると、リベットの頂点が靴の外からでも容易に触知でき、拇指球の中心を正確に確認できます(以上は当店オリジナル手順)。


4)足裏がほぼ水平になるように靴をセットします。このとき水平な場所を用い、また適宜かかとの下にものを挟み込んでかかとの高さを微調整します。
上記用意ができたところで拇指球の真下に相当する靴のソール側面にマークを付けます。マークはマジックペンでもいいし、正確を期する場合にはケガキ針でマークしてもいいでしょう。

※「拇指球の真下」を決定するときに足裏の角度をどうするかはいくつかのやり方があり得るが、当店ではマーク付け作業を「足裏水平」で行います。


5)4)でマークした「拇指球位置」よりもペダル回転軸が2〜7mm程度後ろに来るようにクリートの前後位置を決めます。このときも足裏水平を保ちます。

※ペダル回転軸真上に拇指球をおくべきだという研究もあるが当店では従来使われてきた「若干拇指球を前に置く」やり方をとっています。これは足のアーチ構造とその機能、およびより効率的な動作方法についての考察(運動理論)に基づきます。詳細略。

同じ理由で、拇指球と小指の付け根(小指球)を結んだラインと足の中心線(かかとの骨の中心と人差し指付け根とを結んだライン)とのなす角度が鋭角に近い人ほど(小指が後ろへ下がってついているいる人ほど)、クリート位置を後ろ気味に設定しています。


6)クリート左右位置は、理論上は骨盤幅(厳密には股関節大転子の左右幅)を反映します。実際にペダルに靴が固定されたときに左右の股関節大転子の中心の真下に左右おのおのの足の人差し指の付け根が位置する、というのがクリート取り付け幅についての理論値となります。

ですが実際はとりあえず一番クリートを内側につけることが多いです。理由は、理論通りの位置にすること自体が(クランクセットが足の間に挟まるという)自転車の構造上元々無理な場合が多いこと、理論値に近づけると実際上左右への踏ん張りが効かず乗り手の動きがぎこちなくなる例が多いこと、にあります。

当店ではこのセッティングで乗ってみて「明らかに足が外に開いてスムーズに上下しない」という感覚があったら、1〜2mmずつクリートを外に動かし靴を内側に寄せてゆくべきだと考えています。この際、左右均等になるとは限らないとも考えています。後述。


7)クリートの向き(つま先が内を向く(=トーイン)か、外を向く(=トーアウト)か)については、前述した足の中心線が自転車の進行方向線と平行にセットするのを原則としています。


8)左右の不均等や個人のくせについて。上記はあくまで最初にクリートをセットする基準について述べたもので、脚の長さや足のかたちの左右不均等や、筋肉の付き方の違いによる癖などについては、可能な限りの問診を行います。そうやって故障がおきにくく違和感のないクリート位置を見つける手伝いをします。

※(例)左右の足の拇指球の前後位置が不均等な場合、初期位置は左右の拇指球前後位置の中間位置を基準にしてクリートを取り付け、左右均等のセッティングから試してゆきます(オランダの研究に基づく)。


9)最終微調整について。
上記のようにクリートの取り付けは前後・左右・内向き外向きという、三つの軸にたいして行います。これらについて最終的に乗り手が違和感なく走ることができるかどうかは、乗り手自身にしかわからないことです。そこで、違和感があるようであれば乗り手は自分で微調整を行う必要があります。その際の注意点は以下の通り。

●一度に動かす距離は2mm以内にとどめる。人間の足にはおもしろい癖があって、従来の位置から大幅にクリートを動かすと、従来の位置と新しい位置との比較ができなくなり「振り出しに戻る」感覚になってしまいます。また、基準より大幅にずれるということは好ましくない癖がある可能性もあるので、一度に大幅に動かすことは好ましくありません。

●微調整の結果が左右均等になるとは限りません。自転車が左右対称にペダルを踏んで走行するように設計されている以上、あまりにも左右が大きくずれるのは好ましくない癖の可能性もありますが、教条的に左右対称にこだわることも同様に好ましくないものと考えています。

また左右のずれについてはおもしろい現象があります。たとえば乗り手が左足クリートに違和感を訴えている場合であっても、ずれは反対の右足クリートに起因しているということがあるのです。これは利き足であったり筋力が強い方の足(この例では右側)が力づくでずれたクリート位置に順応し、そのツケが弱い方の足(この例では左側)にまわって「しっくりこない」ということがあります。左右のずれを考える上では上記のようなことも考慮に入れる必要があります。

●最終調整について、最近興味深い方法を知りました。クリートの位置に違和感を感じたらまずは靴の中で足を動かして違和感が少なくなる方向を探り、あとでクリートを動かして結果を検証するというのです。実際に即した優れた操作方法だと思います。
(エンゾ早川著「ロードバイクセッティングバイブル」(エイ出版社)より要旨引用)


10)その他。カーボンソールにご注意。カーボンソールは硬いのでクリートが滑ってしまって固定が難しいことが良くあります。靴やクリートを壊す危険があるので力まかせに固定しようとしないで、「カーボンアッセンブリーコンパウンド」を使って摩擦を増すようにしてください。著しく効果があります。

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