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スポーツバイク・ハイロード
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作成2009/08/14 |
iBike Pro(アイバイクプロ)とは体重などの初期値と、走行速度・勾配・風速のデータを組み合わせて乗り手の発揮パワー(ワット)を表示する「パワーメーター」機能を備えたサイクルメーターの一種です。2008年モデルの「iBike Pro with wireless HRM」モデルでは心拍計とケイデンス計も同時に装備しています。
今年8月1日のハイロード乗鞍「ノリクライム」イベントで1年ぶりに乗鞍でのパワー計測をしま した。昨年からの進歩の有無を検証しようと意気込んでいたのですが、なんとコース途中からかなり強い雨に降られ、登って下っての約4時間の行程で完全に浸水してしまいました。
メーカーは「防水」とうたっていますが、風圧センサーへの開口部がある以上、そこからの浸水は構造上避けられないと思います。ハイロードでは「雨天の使用は無謀」と判断しました。今までのお客さんの事例や自分の経験からいっても、数十分程度の雨でも危ないと思います。
ただし、他社のより高価なパワーメーターでも同様の浸水事故が頻発していますからその点で引けをとるということはないですし、ハブやクランクがそのまま水に弱い計測部分になっている他社製品と違って、
などという対策が手軽にとれる点ではまだアドバンテージがある、ともいえます。
また開口部からの浸水を防ぐ工夫として、本国ウェブサイトで紹介されている「リモートウインドセンサー」(外部リンク。ベロコンプ社、PDFファイルが別ウィンドウで開きます)を取り付け、チューブの途中に水が上がってこられない登り坂を設けるというのも考えられます。「雨でも使いたい」という人はちょこっと工作してみる価値ありだと思います。
多少負け惜しみ気味ですけれど、雨の時は気を付けてうまく利用してください。
今回は乗鞍の貴重なデータが入ったままで水没したので、せめて雨が降り始めたところで念のため区切っておいた前半部分のデータだけでも取り出したい、という思いもあり、また輸入元の保証期間(1年間)を過ぎてもいたので、死にものぐるいで(笑)復旧に取り組みました。以前ネットニュースで水に落としたケータイ電話を復活させた事例を読んだことがあったので、それを参考に試してみました。
水没後1〜3日 除湿器を使いながら陰干ししたところ、液晶にたまった液体の水はかなり排除できました(上写真)。
水没後4〜5日 干しておいても液晶についた曇りがなかなかとれないので、プラスチック袋にタンス用除湿剤の中身(吸水してゲル状になるという粉末)と一緒に密封してさらに除湿をすすめました。蓋を外した電池ボックスと風圧センサーの二つの開口部から粉末が侵入すると別のトラブルになりかねないので、これらの開口部はティッシュペーパーで覆っておきました。
この状態で約24時間たつと液晶の曇りが消えて外見上は異常がなくなりました。さらに回路基盤の除湿を徹底したいのでもう数日このまま置き、次の走行する機会に、iBikeの機能が回復しているかテストしてみました。結果はいつも走っているコースで同じようなパワーデータが記録され、どうやら機能面でも完全に復旧できたようでした。
その後メーカーウェブサイトの「フォーラム」(メーカーやユーザーが情報交換をする掲示板。英語です)を見てみると、少しの水で浸水するというのは珍しくない現象のようです。また数名のユーザーが「本体(とワイヤレスマウント)の電池を抜いてしっかり湿気を抜けば復旧するので問題ない」と報告しています。
自分は「問題ない」とは全く思わないですが、とりあえず水没しても落ち着いて対処すれば何とかなる場合もある、といっていいでしょう。自転車は屋外で、場合によっては雨天でも使う道具ですから本質的にはメーカーに抜本的対策を望みたいところです。
今回はプロファイルを使用して本格的にヒルクライムの計測をし、また、後述するように精度を検証するために利用できるウェブサイトを発見したことからiBikeの精度面の実力をはじめて検証してみました。
今回は水の影響を受ける前のきちんとデータのとれた区間(前半10.6km)の記録を、ネット上で公開されている「ヒルクライム計算」(別ウィンドウにて)を用いて検証してみました。このウェブサイトでは体重や標高差・距離と時間などの変数を入力すると区間平均ワットを教えてくれます。(作者の「酒井 智巳」さんに感謝してここに記します)
今回の前半データのグラフはこちら
同じ区間のデータを表で見るとこちら
上の表は生のデータを「プロファイル」を利用して解析処理した後のものです。ここでは平均パワーは206.9Wと出ています。
いっぽうこの表に出ている体重や標高差・距離と時間などの変数を上記ウェブサイトに入力してみた結果、算出された平均パワーは208Wでした。非常に誤差が少ないことがわかります。
iBike2ソフトウェアでは、プロファイル(各iBikeおよび乗り手・バイクに固有の、より精度よくパワーを算出する為の基礎データセット。乗り手が自作する。こちらの過去記事を参照ください。)を使用してデータを解析・精度向上処理することができるのですが、この処理をした場合とその前の状態をワンタッチで比較できる機能がついています。これを今回のデータで使ってみると、解析処理後は206W程度になるパワーが、解析前の状態だと182Wくらいにしか表示されないという、大きな差が出ました。
プロファイルの概念のない「ジェネレーション1」のiBikeユニットではパワーの相対的比較ができるにとどまっていたものが、プロファイルを使えるようになった「ジェネレーション2」(2009年に販売されていたユニット)は他の人や他のメーターの計測とのパワー値の絶対的比較ができるまでに大きく進歩しているようです。
先日国内上陸した最新の「ジェネレーション3」ではさらにすすんで、初期設定の標準で従来プロファイルと呼ばれてきた基礎データを作成する手順(より簡便に進歩しているが)を要求しているので、不慣れな人でもはじめから高い精度が期待できそうです。
先日国内上陸した最新型「ジェネレーション3」についても、ハイロードでは研究開始しています。
iBikeの絶対的精度については従来おおくのひとから疑問が投げかけられて来ましたが、メーカーではますます自信を深めているようです。メーカーサイトでは、他のメータとの比較研究をPDFで掲載(別ウィンドウにて)しているほか、他のパワーメーターとの記録のずれが最小にとどまっていることを示す動画も公開されています(下。英語です)。
つい最近の7月10日にメーカーサイト上で無償公開された最新のファームウェア(バージョン4.0.0)を使うことで、NP(ノーマライズドパワー)、IF(インテンシティファクター)、TSS(トレーニングストレススコア)といった、最新のパワートレーーニングで重要な指標を走行中リアルタイムで表示できるようになるそうなのです。これは従来のどのパワーメーターにも備わっていない画期的な機能で、他のパワーメーターに対する大きなアドバンテージとなりうると思います。また、こうしたアップデートが頻繁に、また無料で提供されることに対しては好感が持てます。
ラップタイマー(練習コースの途中で記録に「しおり」を付けることができる)、インターバルトレーニング、フィットネステストなど、「これがあったら」という機能がいろいろと付加されたようです。
また、初期設定がかなり簡略化される一方、精度の高い測定をするために「2マイルライド」という、プロファイル作成に似た(しかし簡略された)手続きを要するようになりました。より高い精度をより手軽に実現するための努力の表れだと思います。このあたりは引き続いて研究していきます。
驚くことに製造元ベロコンプ社では、ソフトウェアのみならずハードウェアのアップグレードも提供しています。旧モデルを購入したひとはより低廉な追加費用で最新型の新機能を手にすることができるのです。自分青山も近日中に自分のユニットをアップグレードしようと思っています。そのてんまつはまたこのコーナーでどうぞご覧ください。
当店ハイロードでは自店で取り付け・インストールなどの作業をした経験から、簡単で見やすいマニュアルを作成しました。現在全4弾(プラス番外編)まで制作しており、これらは当店でiBikeをご購入くださるお客さんに無償で提供しています。またこのマニュアルはこのコーナーに見られるような実体験を通じて随時内容を見直し、それまでのお客さんにもすべてアップデートとしてご提供しています。ぜひお問い合わせください。
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