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「格安レース・トレーニング補給研究」
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作成2011/09/13 更新2013/10/10(配合数字更新) |
レース・トレーニング、ロングライドのエネルギー補給に便利&きわめて経済的なアイテムとノウハウをご紹介します!
当店ハイロードではいつも「もっと便利なもの、もっと無駄を省けるもの」を探したり、自分で作り出したりしてご紹介しています。今回もかなり「手作り系」です!
レースやロングライドの後半でエネルギー切れになることは良くあります。思い通りの走りを楽しむためにはバイクの整備やウェアの選択などと並んで「適切な休憩やエネルギー補給」が大変重要です。サイクリングであれば道々コンビニに立ち寄ればいいのですがレースではそうはいきません。走りながら安全かつ迅速大量にエネルギーを補給する必要があります。またサイクリングでも地方にいけば都会のようにそこここにコンビニがあるというわけにはいかなくなります。
そこで補給食を携帯する必要が出てくるわけです。レース用のエネルギー補給食の代表格に「ショッツ・エナジージェル」という製品があり、広く支持されています。これはビニールパウチに入ったねっとりしたシロップで、封を切って口に流し込んで食べます。しかしこの「ショッツ」には幾つか課題があります。
そこでこうした問題を解消する方法をこの夏研究してきました。以下に現時点のハイロード流補給食ノウハウを公開します。ショッツ1本のカロリーあたり80円?
ステップ1 補給食の容器はこれ!
ハイドラパック・ソフトフラスク
約237ml(8oz) ¥2,100 (税込)
約148ml(5oz) ¥1,800 (税込)
ショッツを予め封を切って入れたり、下記のような自家製溶液を入れて携帯します。大変柔らかくて丈夫な容器なので内容物をしっかり絞り出すこともできるし、蓋を取るとかなり指が入るので使用後の洗浄、乾燥も容易にできます(これはとても重要です!)。
(先端を噛むだけで中身を吸い出せる)
ステップ2 現時点のハイロード特製レシピはこれ!
用意する物
溶液の調合方法(2013/10/10更新。ソフトフラスク(小)にほぼぴったり入る分量です。)
使用方法
ソフトフラスク(小)に入るだけ溶液を入れます。うまく調合できていればほぼ全部が入ります。これで約380KCal、ショッツ3つ分強のカロリーです。もし残ったら帰宅してから飲むためにタッパーのまま保管します。必要に応じて冷蔵庫に入れてください。
ソフトフラスクの分は走行中に適宜口にします。そのままでは濃いので、溶液を飲んでから積極的にボトルの水も飲むようにしましょう。あまりに濃い溶液は腸での吸収が遅くなるようです。ボトルに甘い溶液を入れて飲むとフレームに飛び散るのですがこのやり方だとそういう汚染もなく快適です。
(補注)帰宅後ただちに体重1キロあたり1gのMDを取ると翌日の筋肉痛が明らかに抑えられます。調べたところでは運動終了後の筋肉の中では筋肉組織を分解してでも枯渇したグリコーゲンを補充しようとする働きがあるそうで、運動終了時に迅速にエネルギーを補給することはこの筋肉の分解を防いでくれるのだそうです。
以下にハイロードでこれまで行った各種(人体)実験の記録を掲載します。どうぞお楽しみください♪
ソフトフラスク実験記録
2011年夏 ハイロード青山
第1回 ハチミツ
ハチミツ50gとレモン果汁小さじ2をそのままソフトフラスクに入れて薄めずに携帯し、走行中に摂ってみた。直ちに血糖値が下がる感じがあってエネルギーの補給としてはうまくいかなかった。
(解説)
ハチミツはショ糖とブドウ糖を半々に含んでおり、これらふたつの成分はいずれも素早く人体に吸収され、血糖値を急激に上昇させる(これをGI値が高いという)。
血糖は体のエネルギーとしてきわめて重要であると同時に多すぎる血糖は血管壁を傷つける作用があるため(糖毒性)、人体には多すぎる血糖を速やかに低下させる安全機構が備わっている。血糖値が急激に上昇するとインシュリンが分泌されるのはこの安全機構の一環である。インスリンは血液中の当分(ブドウ糖)の体組織への吸収を高め、急激に血糖値を下げることができる。
これらの機構の組み合わせにより、「ブドウ糖など吸収の早いエネルギー源を急激に大量に摂取すると、一気に血糖値が上がったあとインスリンの大量分泌により今度は血糖値が急激に低下し運動するためのエネルギーが不足する」という現象が起こることがある。これを「インスリンショック」といい、極端な場合には低血糖に原因する意識混濁など危険な症状を呈する場合もあるという。
またインスリンには脂肪の燃焼を妨げる作用および血中の糖を脂肪に変えて組織内に貯蔵しようとする作用があるので、持久性運動中にインスリンが分泌することは脂肪を運動のエネルギー源として使用することができなくなるという重大なハンディを負うことになる。
そこで持久性運動中のエネルギー補給においてはインスリンの分泌を促さない方法が望ましいことになる。
(もっともウォーミングアップが完了した状態や競技中にはアドレナリンが分泌されているので、これによりインスリンの分泌が抑制されるという作用も同時にあるという。)
第2回 果糖
果糖(フルクトース)は糖の中でももっともGI値が低いものである。そこで低血糖を避けるためエネルギー源としてこの果糖をロード走行中に摂取する実験を行った。
方法は果糖100gを少量の水で溶かした非常に甘みの強いシロップにレモン果汁小さじ2を加えたものを走行中2度に分けて摂ってみた。
結果としては即効的に体の力がみなぎってくるような感覚はすくなく、しばらくするとおなかが張ってガスが出てきた。またおなかが緩くなる現象も起きた。
(解説)
果糖は吸収が遅いので一時に大量に摂ると小腸で吸収できなかった分が大腸に運ばれてしまい、そこで微生物の作用で発酵して腸内ガスを生じるらしい。またおなかが緩くなるのも同じく腸内微生物の働きによると考えられる。
それにそもそも運動中のエネルギー補給であるから即効性が求められるのに、果糖の吸収には時間単位での時間が必要となる。これらの理由から果糖は運動中のエネルギー補給源としては適さないということがわかった(ツーリングなど低強度長時間の運動の場面ではまた異なるかもしれない)。
(余談)
コカコーラを代表とする清涼飲料水には砂糖(ショ糖)ではなく液糖が使われている。
液糖とはブドウ糖と果糖を混合した液状の糖で、「異性化糖」に含まれる。液糖はでんぷんを化学処理して作られ、砂糖よりも価格が安い。液糖には果糖の配合が多い「果糖ブドウ糖液糖」、逆にブドウ糖の配合が多い「ブドウ糖果糖液糖」等がある。
第3回 マルトデキストリン
マルトデキストリン(MD)とは消化吸収の早い(GI値が137と非常に高い)糖類でありながらインスリン分泌があまり起こらないらしい物質。でんぷんを酵素で処理して作られ、レース中の補給食として著名な「ショッツエナジージェル」の主成分。
このMDをスポーツサプリメントパウダーとして大量に入手、使用してみた。ネット通販のアマゾンで2kgあたり2000~2500円で入手できる。これを単純にカロリーで計算すると2500円で7600KCalとなり、ショッツ1本のカロリーである117KCalあたりにすると38.5円となる。レモン果汁や容器の代金などで倍額になるとみてもショッツ1本80円という計算になり、コスト的に大変魅力ある方法となる。
このMDのパウダー100gをどんぶりにいれ、できるだけ少ない水で溶かした。コーン粒大のダマがたくさんできたが気にせず作業していると自然に解消した。ただしスプーンでかき回すのでは溶かすのにかなり時間がかかってしまった。約380kCal。
このままだとふのりのような味で、粘りもかなりある。ここにレモン果汁小さじ3、食塩1gを添加し、食味を整え唾液が出やすくする目的でさらに果糖小さじ1を加えた。レモンと塩はもう少し加えてもよい。
これで約150CC、ソフトフラスク小の1本分となった。ショッツに換算すると3本分強のカロリーとなる。
走行中はこれを3度に分け、約30分間隔で摂取した。粘りがあるのでややフラスクから絞り出しにくく、吸い出す感じで摂った。ビニールの封を切って飲むショッツエナジージェルなどと異なり、手指はまったく汚れない。
レモンの酸味のおかげで口に含むと唾液が出てくるので容易に飲み込めたが、消化吸収と塩分バランスを整えるため食後にはやや多めに補水を心がけた。これにより即効性のエネルギー補給効果を得ることができた。またおなかが張ったり低血糖になったりする弊害は全くなかった。
参考資料(別ウィンドウにて)
1)トレーニング後はシャワーを浴びるよりもまず糖の摂取を (2013/09/09更新)
http://www.nutrchem.kais.kyoto-u.ac.jp/nutrjoom/index.php/ft-essay/76-post-training
2)アスリートの食生活(疲労回復に注目した炭水化物摂取について)
http://www.wasedaclub.com/blog_detail/blog_id=8&id=619
3)ハイドラパック・ソフトフラスク
http://www.hydrapak.jp/product_gelbot/softflask.php
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