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「驚異の高性能オイル、ナスカルブ」
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作成2012/05/07、更新2012/10/06 |
たとえ100万円の超高級スポーツバイクであっても、チェンなど機械部分の潤滑がきちんとできていなければ楽しく走れません。スポーツバイクの世界ではこれまでも様々な「超高性能オイル」が登場し、当店でもいろいろ研究してきました。
今回見つけた「ナスカルブ」はすごいです。ひょっとしてこれで当店のオイル・ルブリカント研究も打ち止めか?6万円、10万円という高い金額を「自転車という道具」に払うのであれば、チェーンオイルはぜひこれにすべきだと思います!
1)ナスカルブ、入荷しました
化研産業・ナスカルブ
20ml直液 \1,050-税込
70mlエアゾール \2,205-税込 (実質液量29ml)
★追加★420ml大缶エアゾール \3,300-税込 (実質液量170ml)
ナスカグリース(グリースタイプ・現在当店では未販売)
20g (ソフト・ミディアム・ハード)
メーカー担当氏(ご自身もサイクリスト)によると、開発から10年程度経っておりさほど新しい製品ではないのですが、派手な宣伝をしないできたのでこれまで自転車業界でほとんど知られて来ませんでした。最近千葉県のフレームビルダー・バイクショップ「マキノサイクルファクトリー」さんで取り扱いが始まり、そちらのウェブサイトから徐々に情報が広まって普及しはじめているそうです。
★マキノサイクルファクトリーさんのウェブサイト(別ウィンドウにて) 自分も勉強させて頂きました。謝して記します。
2)ナスカルブの特徴
(20ml直液ボトル)
当店では主にロードバイクでの使用を念頭に、自転車の駆動チェーンの潤滑油に対して求める性能をリストアップし、それを元にして各種オイルをテストしてきました。ナスカルブは価格以外のほぼすべての点で今までのところ非常に高い性能を示しています(以下再整理2012/10/06)。
- (1)漕ぎが軽い
- 当店で今まで試したチェンオイルの中では漕ぐときの抵抗感がもっとも少ないと感じます(過去最高のものと同性能)。使用するにつれて余分の油がチェンから押し出されてくるとさらに漕ぎが軽くなるように感じます。
- (2)潤滑が長もち
- 当店のテストでロードの晴天走行700km程度まできましたが、これまでのところ全くオイル切れのような問題がありません。漕ぎの軽い特殊オイルでは非常に寿命が短い例が多いので、これは異例に成績がよいといえます。もっとも油膜が薄いためかチェンラインが斜めになるときのギヤ鳴り音はやや大きいような気がします。
(メーカー情報)S社が建物用シャッターで採用し、デパートなどの大型シャッターで間欠的に発生する音鳴り現象の間隔を10倍以上延長できた(通常だと1ヶ月、ナスカルブだと1年半から2年)といいます。
- (3)汚れにくい
- (汚染が少ないことは衣類やバイク自体の汚れを防いでくれるので、二次的ではあるもののできるだけあって欲しい性能項目です。)
- ナスカルブではオイルの使用量が少ないので汚れの原因となる埃・砂塵をあまり寄せ付けません。自分の実験では全く汚れないということではなく、やはりある程度は汚れたオイルがチェン表面に出てきます。しかし運転時間当たりで発生する汚れの量・程度は非常に少ないといえます。
- (4)雨天でも潤滑を維持できる
- とくに超長距離のロングライドイベントでは雨に降られることはまれではありません。そういうときでも最上級の漕ぎの軽さを保ったまま、メンテナンスに煩わされることなく走れる性能が欲しいものです。
当店独自テストではありませんがメーカー情報として、豪雨のあとほとんどきちんとしたメンテナンスができない状況でも長期間性能を維持できたという報告があるそうです。
下の「潤滑の仕組み」の項目にも書きましたが、オイルが完全になくなっても別の仕組みで潤滑を維持できるというのが雨天での耐久性の秘密でしょう。
- (5)濡れたところに注せる(水置換性)
- 水置換性とは濡れた部品(チェーンなど)に注油するとオイルが部品の表面についた水の下に潜り込んで金属表面を保護し、水滴を振り落としてしまう性質を指します。ナスカルブにはこの水置換性があり、防湿・防錆作用もあるので雨天走行や水を使った洗車のあとの注油が非常に容易です。これは実際にバイクをメンテして好調を維持するための作業時間を大幅に短縮してくれるたいへん重要なポイントです。
(参考:濡れたチェーンへのナスカルブの注油方法)
1)ざっとチェンの水を払ってから濡れたままのチェンに注油する。
2)注油後しばらくチェンを動かすと内部の水がオイルに押し出されて出てくるので、出てきた液体(水とオイルの混合物)をぼろ布でぬぐっておけば完了。非常に簡単です!
- 少量ですむ
- 原理上ごく少量で十分作用し、超小型の20ml直液タイプでもうまく使うとロードバイク8〜10台のチェンに注油できます。逆に付けすぎると汚染の原因となり良くないです。
上記の他自転車のチェーン潤滑油に求められる性能としては、
- 泥ハケ性能:マウンテンバイクやシクロクロスなどの場合、チェーンに泥が積もらないようにしたい
- 防錆性能:海・海岸で使う場合などはとくに強力な防錆性能が求められます
- 超長期潤滑性能:メンテナンス頻度を下げたい場合(レンタサイクルなど)ではこの点が重要になります
などがありますが、使用環境がきれいなロードバイクであって、しかも「たからもの」としてきれいにメンテナンスされる場合であれば、ナスカルブはこれらの見地からも十分以上の性能を備えていると思います。
欠点を見つけないと公平にならないので、意地悪くいろいろ勘ぐってみましたが、「価格が高い」ということのほかには、「チェーンの駆動音がやや大きい」ということしか見つかりません。後者の駆動音については油膜が薄いので他のオイルのような消音効果が少ないのでしょう。しかし油ぎれと違って駆動効率が悪いわけでは全くないので、「慣れの範囲」だと自分は思います。
(70mlエアゾール。一部他社スプレー製品では溶剤を加え粘度を下げて浸透性能を上げる反面オイル本来の性能を落としてしまう例もあるそうですが、ナスカルブでは噴射剤以外の溶剤は無添加で性能を100%発揮します)
3)ナスカルブ、超高性能潤滑の仕組み
(メーカー説明図)
EP剤:極圧(Extreme Pressure)剤。高圧で金属の間の油膜が切れている、切れかかっている時に潤滑を維持するための添加剤。
FM剤: 摩擦調整(Friction Modifier)剤。金属の間に十分油膜が残っている時に働く油の性質を調整する添加剤。
「ナスカルブに含まれる塩素などの成分が金属同士の接触の際に発生する高温により金属表面に化合吸着し、融点の低い化合物被膜を形成する。この化合物が金属接触の極圧環境で溶融することで液相潤滑を維持する。」
「この段階ではたとえオイルが切れていても問題なく潤滑ができている状態となり、実用上も豪雨などでオイルが完全に切れたあとでも相当期間潤滑性能を維持する。」
金属接触部分では、金属素材が摩耗する=引きむしられるだけのエネルギーが働いているわけで、局部的に見ると相当な高熱が発生しています。また化合物の溶融温度の例としては、塩素と鉄の化合物は320度あるいはそれ以下で溶融する、硫黄と鉄の化合物だと620〜630度で溶融するそうです。
★潤滑について優れた資料を発見しました。「潤滑油用語集」(別ウィンドウにて)
ユーチューブ上にもナスカルブの性能を示す実験の動画がいくつかあります。とくにマキノサイクルファクトリーさんの水置換性実証実験の動画はお勧めです。
(大好評につき大型入荷!420ml大缶スプレー)
4)当店ハイロードでのテスト状況
- 今まで晴天ロード走行700kmほどで問題なし。最初は少し付けすぎだったようで、300kmあたりからチェン外側に黒く汚れたオイルがすこし付着するようになったが、気がつくたびにぼろ布でからぶきして、そのあとあえて追加注油をせずに走行しているが問題を感じません。
- 普通のウェットタイプのオイルだとこれくらいの走行距離でチェンの内側に砂塵が入り、手でチェンをねじると「じゃりじゃり」音がするのだがそのような兆候は全くありません。これはオイル皮膜が薄いことによるのではないかと思います。
- これまで当店でテストして「漕ぎの軽さ」という点で異次元ともいえる好感触を実現してきた「クリアドライスライド」(当店過去記事。別ウィンドウにて)という潤滑剤があります。このオイルではしばらく使うとチェンからアルミ材の切削時に出る独特の臭いがしてきました。これはチェンリングのアルミが削れていることを意味すると思っていますが、ナスカルブではこのようなアルミ臭は全くしません。漕ぎの軽さでもナスカルブはクリアドライスライド実施後の絶好調の時に匹敵する軽さを維持できています。
- 原理上は金属〜金属の潤滑に限定されるのではないかと予想しましたが(例:ブレーキやシフトのワイヤー、ベアリングシールなどの潤滑に向かない)、しかしSPD-SLペダルクリートの音鳴り対策としてクリートとペダルにごく薄く塗布したところ著しくスムーズにペダルが脱着できるようになり、音鳴りも止まりました。ここから金属〜樹脂、樹脂〜樹脂の潤滑においても高性能といってよいと思います。しかも油膜が極薄なので汚染がほとんど起こらず、埃にさらされるペダルクリート部分の潤滑に最適です(歩くときにクリートが滑るのは要注意です)。
- 今後グリース製品のテスト(ハブやBBなどのベアリング部分)、シフトやブレーキワイヤーへのテスト(樹脂と金属の高品位潤滑)などをしてみたいと思っています。
- (直液ドリップ容器とスプレー容器の使い分け)自分は基本的にはスプレーのほうが使いやすいです。スプレーの中身はオイルと液体の噴射剤(LPG)が混ざっていて、噴射された瞬間は粘度の低いさらさらした状態で出てきます。これがチェーンなど部品の奥まで浸透しやすく、浸透してから噴射剤が揮発して本来の粘度に戻り潤滑を維持するみたいなのです。
ただし(油が飛び散るとまずい)ブレーキの近くや、ごく細かい作業をするときなどは注射針のような細いノズルの油差しに直液タイプを入れて注油しています。またはじめての人がお試しで購入するにはお手軽価格の直液タイプは手が出しやすく良いですね。
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