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「小柄な方向けのロードバイクを制作しました(作例紹介)」

作成2015/12/21

この冬ひさびさに腕をふるって小柄な方向けのロードバイクを製作しました。オーナーのお許しを得て作例としてご紹介します。小柄でも簡単にはあきらめないでいいんですよ!

【まとめ】
1)身長145cmでも普通サイズの車輪で安心安全に乗れるロードバイク
2)体格にかかわるあらゆる部分を特別に工夫しました
3)実際に走ってみることのできる特製シミュレーターバイク「ハイロード4号」で安心安全を確認してから製作しました


小柄でも普通サイズの車輪のバイクに乗ったほうがいい理由


(画像クリックで大きな写真を表示)

このバイクのオーナーYさんは大人の女性でロードバイク初心者、身長は145cmです。これまでにいくつかの他店で「ロードバイクを買いたい」と相談してみたものの「体格の点で無理ですね」「ジュニア用なら乗れますが」と、思い通りのバイクを買うことができなかったそうです。そこでフィッティングを売りにしている当店にご相談にいらっしゃいました。

自分青山はロードバイクではできる限り普通サイズ(700C、ないし28")の車輪(ホイール)をつかうべきと考えています。それは理論上「車輪が小さくなると転がり抵抗が大きくなり、コーナーリング性能の限界が低くなり、乗り心地の点でも悪くなる」という事情があるからです(理屈の説明はここでは省きます)。もちろん体格に対して車輪が大きすぎることによっていろいろな欠点が生じる可能性もあります。ロードレーサー特有の機敏さが損なわれる、超高速時の安定性が低くなるなどです。しかし現実にそのバイクに乗るオーナーにとってこういった極端な性能が不要なのであれば(つまりレース使用でなくサイクリング用途であれば)、従来の相場感覚ではとても無理と思われるような小柄な方でも700Cホイールのロードバイクに乗せてあげることができるのです。


またいだときに脚が地面に届かない!→解決策がひらめいた

今回のYさんが真っ先に不安に思っていたのは「車輪の大きなバイクをまたいで立った時にちゃんと足が地面に届くかどうか」ということでした。公道で走るスポーツバイクでは安全第一、そのためには安心して乗れることが必須です(安心、安全)。そこで当店特製のシミュレーターバイク「ハイロード4号」を仮に調整して実際に店の前を走ってみてもらいました。ハイロード4号は日本の誇るバイクブランド「ブリヂストンアンカー」の一番小さいサイズのバイクをベースに制作したもので、とりわけ小柄なライダーが安心安全にロードバイクに乗れるかどうかの見極めに役立ちます。


★ハイロード4号。(紹介記事は別ウィンドウにて)

あらかじめYさんの脚の長さを測っておいて、ハイロード4号のフレームの高さ(またぎ越し最低地上高。スタンドオーバーハイト)の設計値に照らして十分な余裕を見込んでまたいでもらったのですが、なぜか実地だとうまく脚が届きません。少し考えてやっと理由がわかりました。ロードバイクのサドルは前後に長いので低くセットされたサドルの長い先端でお尻が前に押し出されてしまい、フレームの前上がり形状のために設計上の想定位置より高い位置でしかフレームをまたげないのです。

今回はここで天才的なヒラメキがありました!”サドルの先端が邪魔なら先端のないサドルを試してみたらいいじゃないか”。最新のサドルデザインに”ノーズレスサドル”というのがあります。もともとは骨盤を深く前傾させる競技志向の乗り方をした時にサドル前方に当たる痛みを解消するためのデザインなのですが、これがもしもYさんに合うようなら足つき性の問題を突破できる可能性が見つかったのです。そして選んだのが下のサドル、「コーブ・フィフティファイブJOF」です(紹介記事は別ウィンドウにて)

このサドルのおかげですわり心地は快適、またいだ時に足もしっかり地面に届くという組み立てが可能になりました。


(特異な形のコーブ・フィフティファイブJOF)


小柄なひとには短いクランクが必要。歩幅と同じです

次に調整したのはペダルクランクの長さです。クランクの長さは歩幅のようなもので自分に合わないときはとても動きずらい、ペダリングしにくいバイクになってしまいます。ところが市販のバイクにつけてあるクランクは短めでも165mm程度と、小柄な人にはまったく長すぎるのです。

今回はハイロード4号に搭載した可変長クランクを使ってまずは155mmを試したところ長すぎ、150mmもだめでした。ここで可変範囲の限界にきてしまったのですが当店ではさらに短いクランクの現物をこうしたテストのために用意しています。(関連記事は別ウィンドウにて)。そこで145mmのクランクに付け替えて試したところ、これがYさんの好みにピッタリのサイズと判明しました。本人でも実際に試してみるまではわからないのがクランク長の良しあしです。


(ハイロード4号と組み合わせて試せる、非常に短いクランクセット)


小柄なひとにはふさわしいハンドルを

仕上げはハンドルへの工夫です。特別な形のハンドル(ディズナ・J-FITおよびJ-FITモア)の先端をカットしてやると超小型のドロップバーに変身します(当店では70mm切り落としています。当店での通称はハンドルのマイクロ化加工、マイクロハンドル)。小柄な人が普通のドロップハンドルを使おうとすると、ハンドル自体の前後長(リーチ)があるために思うように握り位置を近くに持ってこられないことがあります。しかしマイクロハンドルはリーチが普通よりも30mmほども短くなるのでそのぶん握り位置(ブラケット)を体に近く寄せることができます。

また普通のハンドルでブレーキレバーブラケットをちゃんと握れる調整をしてしまうと小柄な人にとってはハンドルの下部分が低くなりすぎて手が届かないという問題も起こります。それがマイクロハンドルだと下ハンドルも小さくなるのでちゃんと手が届くように組み立てることができます。下り坂や向かい風では下ハンドルを握るのがロードバイクの本来の使いかたですから、ちゃんと下ハンドルを握れるセッティングで乗りたいものです。


(マイクロハンドルと長さ50mmのハンドルステム)

もっともこうしたハンドルの極小化加工は上に書いたような運動性能の犠牲を伴います。レース用に激しく乗るロードレーサーにこのようなセッティングをするとしたらその特性や限界についてオーナーとよく説明・相談する必要があります。


そもそも小さいフレームがあってよかった!

今まで見てきたようないろいろな工夫が実を結ぶのは、そもそもべースとして使える”小さくてちゃんと乗れるロードバイクフレーム”をメーカーが用意してくれているからです。実際今回のYさんのケースでも、バイクのフィッティングをして組み立てあがり形状が確定するまでは、市販品フレームではだめで職人さんに別注する必要があるかもしれないという予測のもとに作業を進めたのです。

今回採用したフレームは「ブリヂストンアンカー」のロングライド向け&入門クラスの女性向けバイク「RFA5W」です。アンカーはかねてから小柄な人でもちゃんと乗れて安全も確保してある小さ目バイクを供給し続けてくれています。


これまでのノウハウの集大成になりました

このようにYさんのバイクは当店のこれまでに蓄積したノウハウの集大成ともいえるものになりました。しかしそれらは決して当店が一人で積み上げたものではなく、いろいろな先人の業績のうえに積み上がったものです。

  1. ちょうどいいサイズのフレームはブリヂストンアンカーが作ってくれました。
  2. マイクロハンドル製作はもともと他店さんのはじめられたものです。また素材となるハンドルは東京サンエスのオリジナル品ですし、東京サンエスは今回使った非常に短いクランクセット「ラ・クランク」も開発販売してくれています。
  3. コーブサドルは大阪のトライアスロン選手兼コーチの西内氏(外部リンク。別ウィンドウにて)がほぼ個人輸入で国内に紹介されている傑作です。
  4. バイクフィッティングのノウハウはリツールやスーパーフィートといったブランドからこれまで自分青山が学ばせてもらってきた知識に基づいています。
  5. 面白半分に作っておいたハイロード4号が大活躍しました。

というわけで、やってみたらとてもいいものができたのでご紹介したというのが今回の記事です。お困りの方がいらしたらぜひ相談してみてください。またこの記事の作業をそのまま真似されるのも歓迎です。「模倣は最大の賞賛」ともいいますから。それにもう一つ、ここで取り上げたアイテムは日本独自のものが多いのです。他国の小柄な人にはきっとこうした工夫をする余地がほとんどないでしょう。日本に生まれてよかった、と思います。

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