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スポーツバイク・ハイロード
「バイクフィットプログラム」
動作レクチャー抜粋〜サドルの座り方

作成2013/07/16

乗り手の要望にあわせてスポーツバイクの寸法を検討・調整するサービスを「バイクフィットプログラム」と名付けて当店独自にシステム化しました。

このようなご要望に応えるためのサービスです。


動作レクチャー (抜粋)

当店「バイクフィットプログラム」で指導している”より良い動き方についてのレクチャー”の一部を紹介します。(当店の過去の考え方と大きく変化した部分があるので、これまでにフィッティングを受けられた方へのアフターフォローも含めてこの論稿を一般公開することにしました)
 当店ではこのレクチャーで見ていただけるように「乗り手が楽しく走るために本当に必要なこと・大切なことはなんなのか」という視点からすべてのサービスをつねに検討しつつ提供しています。

〜サドルの座り方〜

サドルの座り方ひとつにも深い工夫があります。これは背中の下半分から腰にかけての動き方や、ペダルへの力の及ぼし方と密接に関係します。

従来推奨されてきた座り方は、お尻の下の二つのとんがり部分(坐骨結節といいます)がサドルにしっかり乗るように、やや骨盤を立てて座る座り方です。坐骨結節とは骨盤の下の突起で、”体育座り”をした時に床に当たる感じがする部分です。従来の座り方だと、標準的な位置のハンドルに手を置くとお腹のおへそ部分が少し引っ込んで腰が少し曲がります。


(骨盤を立てた姿勢の例)

この座り方にはいろいろな利点があります。最大の利点は1)「お尻の痛みを少なくできる」ことです。サドルにあたるお尻に起こる不快感にはいろいろな種類がありますが、その大きなものがサドルの前側、少し細くなっているところにあたる”おまた”の部分が痛くなったりすれたりしびれたりするという現象です。この座り方ではサドルにかかる荷重をサドル後ろ側の坐骨結節部分により多く配分するので、前側の”おまた”部分に荷重がかかることによる不快感を大幅に減らすことができます。

他にも2)サドルにしっかり荷重し骨盤をサドルに据えることでペダリングを安定させられる、3)おなかが引っ込むことでペダルが上がってくるときにヒザが上がるための余裕が生まれ、膝を引き上げやすいと感じられる、などがメリットとして挙げられます。

サドルの調整においてもっとも重要なことは”痛みや不快感を起こさない”ということです。ですから不快感を減らせる場合が多いこの座り方は”一種の正解”であるということができます。

しかしさらに進んで”より強く漕ぎたい、より長時間走り続けたい”という希望に照らした場合、従来の座り方は必ずしも最適であるとはいえません。腰が屈曲した状態を長時間続けるとケガの危険があるという事情もありますが、本質的な問題として”よりよく力が出せる姿勢”ではないのです。

それでは”ムリなく大きな力が出せる姿勢”とはどういうものでしょうか。それは”ペダルを漕ぐこと”がどういう性質の運動であるかにさかのぼって考える必要があります。

物理学には「作用反作用の法則」というものがあります。”ある物体が別の物体にたいして力を及ぼすとき、力を及ぼされた物体は元の物体に対して反対方向で等しい大きさの力を同時に及ぼす”というのがその定義で、「ニュートンの第三法則」とも呼ばれています。これを乗り手と自転車との関係に当てはめてみましょう。乗り手がペダルを踏んだ時、この法則によれば自転車から乗り手に向かって等しい大きさの力が働いています。とすれば何らかの別の力が”支え、土台”となって乗り手を受け止めてくれなければ乗り手は空中へ跳ね上がってしまうはずです。このことは”宇宙遊泳”を想像すると理解できます。無重力での宇宙遊泳をしながら自転車を漕ごうとしたら、きっと自転車が前に走りだすまえに乗り手が浮かび上がってしまうでしょう。

つまり現実世界でペダルを漕ぐ乗り手が浮かないように支えてくれる”隠れた力=反力”、その最大のものは地球が乗り手の体に及ぼしている「重力」なのです。重力が乗り手の体を鉛直方向に引き付ける強い力が働いているからこそ、その力を支えとしてペダルに脚の力を伝えることができるのです。

そのためペダルに力を伝えるのにもっとも無理のない方向とは鉛直方向、つまり重力で乗り手の体が地球の中心に向って押されるのとは正反対となる方向だということになります。また乗り手がペダルに及ぼす力の始点は身体にかかる重力の作用点である体の重心付近と捉えるべきことになります。

このように体重を支えとしてペダルに鉛直方向の力を加えることが無理のないぺダリングの重要な要素です。この動きは「階段を登る動き」とよく似ています。皆さんが階段を上るとき、まず一歩目を段に乗せ、次いでその足に体重を移動しながらお尻と腿前の筋肉を使って脚を伸ばして身体全体を上に押し上げます。ぺダリング動作とはこの「階段登り」をしている時に踏んだ段がエスカレーターのように下がってしまっているような運動なのです。またはペダルにかけた足に体重を預け、いわば”下向きに体当たりする”ように体重を乗せることでペダルを押し下げるという表現でもいいでしょう。

ではこのような”階段登りのような動き”をするのに適した、”ムリなく大きな力が出せる姿勢”とはどのようなものでしょうか。ほかのスポーツでは経験的により良い姿勢が編み出されています。その一例が”野球の野手の姿勢”です。腰を丸めたり反らしたりせず、いわば伸ばした背筋のまま股関節から上体を前傾し、膝は軽く曲げて、打球に反応して全方位にダッシュできるように構えています。この姿勢は大きくて疲れにくいお尻の筋肉を使って大きな力でダッシュするのに適しています。アメフト選手がセットするときの姿勢も同様ですし、ウェイトトレーニングの経験のある人ならばスクワットをする時の体勢といえばわかりやすいでしょう。

自分はサイクリングでもこれらと同様に、腰から背中の下半分くらいまでは背筋を伸ばすようにまっすぐ気味に使って、上半身を含む自分の体重を下がっていくペダルにしっかり乗せることを意識することが有効であると考えています。

ただ、サイクリングでは場合によってペダルを強く漕いだり弱く漕いだりしますから、常に目いっぱい体重をペダルに乗せる必要はありません。むしろペダルに体重=パワーを乗せ過ぎずに弱くぺダリングしたい場面が多々あります。こういう弱くぺダリングしている場面で上述の腰を伸ばした姿勢をとったときに”手のひらに荷重が乗りすぎて痛くなる”というのであれば、それは(ハンドルの位置がよほどおかしくない限り)その状況での必要以上に上体が前傾していて、ぺダルに乗せきれない体重を手のひらで支えることになっているのです。そういう場合は腰を伸ばしたまま上体を起こして体重の負担をサドルに振り分ける割合を増やしてやるとうまくバランスが取れます。これがサイクリングにおける”ムリなく大きな力が出せる姿勢”の説明です。


(腰を伸ばした姿勢の例)

サドルの座り方に戻ります。ここまで説明したような”腰を伸ばした姿勢”でサドルに座ろうとすると骨盤は従来よりも大幅に前に傾きます。骨盤上の部位で言うと恥骨(恥骨下枝)あたりが強くサドルに接触するような角度になる人が多いと思います。しかしそれでは冒頭で述べたようなサドル前側、”おまた”の部分の圧迫で不快感が出ないか?という疑問が湧くはずです。これに対しては”それはそうだが必ずしも痛くなるわけではない”というのが自分の答えです。

まず強くペダルに乗り込んでいるときには、乗り手の体重の大きな割合がペダルに乗っていますからサドルにかかる荷重自体がかなり少なくなります。普通の走行と立ちこぎの中間状態とでもいえるでしょうか。そのため”おまた”の圧迫が少なくなり不快感が出にくいのです。強くペダルを踏むことの多い競技選手の好むサドルがたいへん固いのに問題が生じにくいのはこれと同じ理屈です。次に弱くペダルを踏んでいるときですが、この場合には上で述べたようにペダルに荷重がかかりすぎないように上体を起こすのがうまい動き方ですから、これをすることで骨盤自体も起き気味に角度が変わり、結果として”おまた”の圧迫は少なくなります。

しかしそれでも”腰を伸ばした姿勢”をとろうとしたときに骨盤前側がサドルにあたって痛い場合はどうすればいいでしょう?実は自分もこのようなタイプです。理屈ではよさそうとわかっても現実には痛みが出るのでこのような腰の使い方がいままでなかなかできなかったのです。

この問題に対して自分が見つけたのが、特殊な形状を備えた一部のサドルです。自分が愛用しているのはセラSMP(イタリア)の製品です。身体の”おまた”の部分でサドルに圧迫されて不快感が発生するのは実際には体のセンターライン部分に位置する一部の柔らかい箇所です。この部分に神経や血管はじめデリケートな構造が集まって走っているためです。そこでこの部分に接するサドル表面に大きく穴をあけて圧力を逃がし、そのままでは今度は座骨結節側(骨盤後ろ側)に圧力がかかりすぎて不快感が生じるので、サドル表面にいわばハンモック状に前後への湾曲をつけ、骨盤下側の湾曲が全体として前後に長くサドル表面にフィットするような”くぼみ”を設けているのがこのSMPの製品の特長です。


(セラSMPサドルの独特な形状。左:骨盤のカーブがサドル面に沿う。右:設けられた大きな穴)

★当店SMP紹介記事はこちらから。大好評です。(別ウィンドウにて)

このほかにも、サドル前側をそもそも切り落としてしまい、しかもセンターライン部分の圧迫を避ける大きな穴まで設けた独創的形状のISMサドル、ISMのデザイナーがより徹底したデザインを求めて設立したCobbサドルなど、サドル前側の圧迫を避けつつ骨盤前側を支えようとするサドルはいくつか登場しています。一般的なブランドの制作している通常のフラットな形状の穴あきサドルも、乗り手によってはここでいうような”腰を伸ばした姿勢”で乗ることができているのではないかと思います。


【サドルの座り方〜まとめ】


「バイクフィットプログラム」のレクチャーではこのような基本に立ち返った説明とアドバイスを行い、乗り手の動作を確認・改善することを心がけています。

<ご注意>
「バイクフィットプログラム」各サービスはすべて予約制です。お電話(03-6413-7168)でお問い合わせください。

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