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書いてみました!イーストンEA90SLX 長文インプレッション
作成2016/06/02

輸入元の東商会さんに提出したインプレッション原稿を、当店のウェブサイトにも掲載することにしました。東商会さんのご都合で(長すぎたのかな?)割愛になった部分もそのままですので前後のつながりをいっそう理解しやすいのではないかと思います。

★東商会Facebook投稿記事はこちら(別ウィンドウにて)

【まとめ】
EA90SLXの美点:
軽快・快適・頑丈・ローメンテナンス・幅広リムなのに23Cタイヤ対応・ロードチューブレス完全対応
EA90SLXの不足点:
エアロ性能は平凡・重量級ライダーは要検討


【製品】イーストン2016ロードバイクホイールセット EA90SLXチューブレス/クリンチャー
【走行日時】2016年3月23日
【走行場所】東京都稲城市〜町田市周辺 (いわゆる「尾根幹」周辺)
【走行条件】天候は晴れ時々曇り、気温は8〜15度程度、無風。

【製品の使用感】

とにかく自分の欲しかった性能が抜群に備わっていて大変気に入りました!同じような志向のライダーには絶対にお勧めできる素晴らしいホイールセットです。
 自分の欲しかった性能とは、1)登りや長距離サイクリングで疲労がたまりにくい軽快で快適な走行感覚、2)あつかいに気をつかわなくて済む頑健な構造、3)チューブレスタイヤの性能を存分に引き出してくれる、シーラント剤の要らない完全なチューブレス構造、この三点がメインでした。このEA90SLXにはこれらに加えて4)軽量なのにやや幅広のリム幅、という注目すべきポイントが備わっています。


愛車と筆者。ヘッドバンドは愛用する「ヘイロ」。抜群の汗止め性能で、近日当店でも取り扱い開始します


〜軽快感・快適性に優れたホイール〜

 第一点の「軽快さ・快適さ」については、まずホイールセット重量がわずかに1400gしかないことが貢献しています。この重量は日本のS社やフランスのM社の提供する最軽量アルミリムレーシングクリンチャーホイールと同等です。他社の多くでチューブレス対応のホイールは生粋のクリンチャーと比べ重量がかさんでくることを考えるとこの重量はたいへん優れているといえます。じっさいに急で短い登り下りを繰り返すコースを走ってみた感触としても、この軽さは直接的に走りの軽快さを生み出していると感じます。

 ついで極細のスポークをテンション高く組み上げるイーストンの設計志向が軽快で快適な乗り心地を生み出しています。筆者は体重60kg台半ばとさほど体重がありませんので、高いテンションで繊細に組み上げたホイールの軽快さをそのまま恩恵として受けることができます。体重のやや重いライダーの場合だとこういう設計志向のホイールは高負荷時にたわみ量が大きくなり走行感覚が損なわれたりホイール寿命が短くなったりすることがあるので、相性を考えたホイール選びがお勧めです。

 他方、こうした軽量志向のホイールはホイール剛性が低下してしまう設計のものもあるのですが、大柄なひとの多いアメリカ生まれのイーストンだけあって筆者程度の体重とパワーでは(ご参考までにFTPはおよそ200W程度)剛性面で不満不快を感じることは一切ありませんでした。軽量ながらそれゆえの不安感を一切感じさせない高次元の性能バランスです。おそらくこの安心感には幅広リムの剛性が寄与しているのではないかと思います。リム幅については後ほど触れます。

 もっともこのホイールにもやや苦手な分野があります。それは空気抵抗が大きな要因となる高速走行です。軽量で高さの低いリムを採用しているEA90SLXだけに、リムがもっと高いエアロ系ホイールに比べると高速走行時の「抜け感」が少ないことは否定できません。しかし空気をかき回して抵抗を生み出す大きな要因であるスポーク本数がフロント16本、リヤ20本とかなり絞られているため、旧時代の手組ホイール(スポーク数32本など)に比べると異次元といってよい「抜けの良さ」を筆者は感じます。平坦走行時に35km/h程度より上は出さない(出せない)筆者の場合、エアロ性能の不足による不満はいっさいなく走行性能ではほぼベストのバランスを楽しむことができます。


東京都稲城市にはこういう風景が隠れていた


〜走りの点でもメンテの面でも「頑健」〜

 第二点の「頑健さ」ですが、これも複数の要因から成り立っています。まず新構造のECHOハブの特性、ついでリム構造からくる剛性感、さらにイーストンお得意のスポークテンションを高レベルでそろえる組み立て方法です。

 ECHOハブは2014年からイーストンの上級ホイールに投入されているもので、ハブ軸のたわみを限界まで防いで剛性と耐久性を稼ぐ一方、事実上メンテナンスフリーであるシールドカートリッジベアリングを使用することでメンテナンス不良の危険を排除し、さらに新構造のフリーハブが頑丈で軽快なフリー作動を実現しています。メンテナンスのために分解してみた印象でもこのフリーハブ機構は駆動効率がよく寿命が長そうなよい構造をしています。

 リムについては、幅広形状であることとチューブレス構造のためリム内部の底面(アウターブリッジ)にスポーク穴がない構造になっていることがリム自体の剛性を飛躍的に上げているはずで、そのぶんスポークの負担が減って疲労しにくい構成になっています。

 さらにイーストンが実施している、聴診によってスポークのテンションをできる限りそろえる作業方法はテンション不斉一によってスポークやリムの一部にストレスが偏ることを防ぎ、ホイール全体の耐久性を上げてくれます。


愛車LOOK585(2005年モデル)に最新のイーストンEA90SLXを搭載


〜革命的規格「チューブレスタイヤ」に完全対応〜

第三点の「チューブレス」ですが、これはとくに素晴らしい点です。このホイールそのものの論点ではないですが、ロードバイクの進化発展においてチューブレスタイヤの発明と普及は革命的ともいえる影響をおよぼすものに違いないと筆者は思っています。

チューブレスタイヤの利点はいろいろありますが、低圧でもリムうちパンクしにくい、転がり抵抗が非常に少なく低圧にした時でも抵抗が急に増加しない、この二点がとくに重要です。これまでのタイヤシステム(チューブラーおよびクリンチャー)では低圧にすると如実に転がり抵抗が増大し、クリンチャーではさらにリムうちパンクの危険も急増するという事情があり、長時間走行のために快適さを求めて低圧運用を試みることがなかなかできないという状況がありました。ところがチューブレスシステムのおかげでこれらのハードルが一掃されたことで、おもうがままに低圧運用を試みることができるようになったのです。現在筆者はタイヤ幅23Cでも内圧500から550kPaという極低圧で日常的に運用しています。

 低圧運用のメリットは甚大です。まず快適性がまし長時間走行の疲労苦痛を低減します。ついで接地面積が著しく増大するのでコーナーリングやブレーキングでのグリップ力が劇的に向上し車体の安定性・安心感が高まります。レースであればより高速で安定してコーナーを通過できるということになるわけでそのメリットは少なくないでしょう。今回のレポートに際しての走行では廃道に近いような路面の荒れた箇所も少なくなかったのですが高い振動吸収性と確実なグリップ感のおかげで危なげなく走破することができました(とくに今回は最新の25Cタイヤを同時に試したので悪路での余裕は際立っていました)。

 このような利点はチューブレスタイヤにシーラント剤を入れて気密性能を担わせる類似のシステム、「チューブレスレディ」や「チューブレスイージー」などと名乗るものでも共通します。しかしシーラント剤を必要とすることであらたな扱いにくさが生じてしまうのです(シーラントの干上がりリスクやこぼれたシーラントによる汚染など)。シーラント剤でごまかすことなくリムとタイヤの精密な嵌めあいで気密性を確保する生粋のロードチューブレスシステムがやはりすぐれており、またこれを実現している背景にイーストンの高い技術力を感じます。

 チューブレスタイヤはこのように高性能である反面取り扱いがやや面倒という風評があります。しかしタイヤの嵌め付けに関しても、パンク時の処置についても近年ますます扱いやすくなってきています。ぜひその異次元ともいうべき走行性能をたくさんの人に楽しんで欲しいと思います。一方このホイールはクリンチャータイヤシステムとしてもまったく何の問題もなく使用でき、それどころかリムテープがいらない分パンクトラブルの危険もむしろ少なくなります。ですからチューブレスにさしあたり興味がないというライダーにもぜひクリンチャーの高性能ホイールとして楽しんでいただければと思います。


タイヤも最新のIRCフォーミュラプロチューブレス「ライト」25Cを装着、25Cらしい懐の深さと抜群の転がりの軽さが印象に残った


〜23Cも使える!稀有な幅広リムホイール〜

 第四点である「幅広リム」についてですが、これに関してはリムの剛性向上とタイヤとの相性という二つの角度から注目しました。EA90SLXのリムはアルミのチューブを丸く曲げて環にしたかたちをしています。工学上チューブ構造の剛性を上げようとすると、同じ分量の同材料(つまり同じ重さ)であるならチューブの径が太くなるほうが有利になります。これがかつてクロモリバイクと同じ太さだったアルミやカーボンのバイクが太径化していった理由です。ですから同じ重量のリムであれば太いリムのほうが剛性の高い構造になるのです。今回のレポートのための走行では、リム単体での剛性向上を感じ取ることができませんでしたが、ホイール全体として軽量でありながらかっちりとした乗り味を備えている背景にはこうした寸法上の優位があるに違いないでしょう。

 リム幅とタイヤの相性を考える時、リムの寸法としては内幅が問題になります。このEA90SLXのリム内幅は17..5mmで最近までの多くのホイールよりも一回り広めです。タイヤシステムの国際標準であるETRTOの指針によればETRTO準拠の17mm幅リムには23Cのタイヤが装着できる保証は与えられていません。かえって多くのホイールメーカーが17mm幅のリムには23Cタイヤの装着は控えるようにと言明しています(イタリアのC社やフランスのM社など)。

しかしこのEA90SLXに関しては“設計段階で23Cタイヤとの組み合わせを念頭に開発されているので組み合わせることに何の問題もない”、というのがメーカーの立場です(東商会担当者よりの口頭回答)。タイヤを太くする場合ふつうは重量がかさみますから、いまお気に入りの23Cタイヤがあって、それを最新の幅広リムホイールでも利用したい、と考えているライダーにとってはこのEA90SLXは絶好の選択肢だといえるでしょう。

 多くのホイールメーカーが懸念する、幅広リムと細めタイヤの組み合わせをした場合に起こりうる不具合としては何種類かが想定できますが、その一つに幅広リムではタイヤがリムの外側にはみ出る量が少なくなるので、コーナーで荷重がかかった時のタイヤのコシが強くなりすぎ、コーナーグリップがタイヤの設計通りに発揮できないという懸念があります(某タイヤメーカー技術者談)。ところがたまたま筆者にはタイヤを低圧で運用したいという希望があり、普通のホイールとタイヤの組み合わせだとむしろコーナーでのタイヤの腰砕けが心配される状況でした。そこにこの幅広リムのホイールを導入したことでむしろ低圧での腰砕けが抑制されバランスがよくなったと感じています(今回のレポートのための走行に先立ってかなりの時間23Cチューブレスタイヤで走ってみています)。


脇道の急坂を登り切ると別世界。牛小屋まである


〜よく吟味して購入して「大正解」〜

このように数値的・理論的に十分な吟味をしたうえでこのホイールを選んだのですが、実際の走行感覚は期待に勝るとも劣らない素晴らしいもので大満足しています。ちょうどIRCから最新のロードチューブレスタイヤが発売されたこともあり、いっそう多くの人たちに超高性能のロードチューブレスタイヤシステムのメリットを、筆者と同じように味わってもらえたらと思います。

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